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「これからはブラッドと呼んでくれ」
自動人形が見たこともないような表情をしている中、男は笑顔でそう名乗った。
その横で気まぐれさんがやはり見たこともないくらい気まずそうな顔をしてブラッドと名乗る男とマグヌスを交互に見ている。
「貴方は、何者なんですか」
トワとフロルをかばうように一歩前に出て、ハルナは尋ねた。
ブラッドは今ハルナの存在に気づいたとでも言いたげにハルナを見る。
「……君が今の館長か。そうだな、そこでだんまりを決め込んでいる自動人形の父親と言えばいいか。マグヌス、可愛い後継者を見つけているじゃないか」
父親?人形の?つくったヒト、という意味だろうか。そもそも可愛いってなんだとハルナは思いながら答えをブラッドではなくマグヌスの方に求める。
その方が早い気がした。だが彼が発した言葉は、
「……最悪だ」
その一言だけだった。
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名前を捨て肉体を捨て、全てを置き去りにして。それでもここに戻ってきてしまった。
運命とは逃れることが出来ないから運命なのだ、運命を変えようとしたその先がやはり運命になるのだ。◆◆◆は自嘲した。
この世界は紙切れ一枚で本の中に生きる数多の人々を殺すくせに、いつまで経っても【我々】の心や体は簡単には死なせてはくれない。
自動人形の記憶№□□□□□
ある日突然何も言わず銀竜は図書館を飛び去った。人形が屋上へたどり着いたころにはその姿は随分と小さくなっていた。
昔からそういうヒトだ、とっくの昔にまともな関係性は諦めている。
だが置いていかれたのは初めてだ。今まで嫌というくらいに全てを拾い上げられた。肉体亡き後は、魂でさえも。
この身体に涙はない。痛みもない。これからすべきことは分かるのに何故だろう、どうしたらいいのか分からない。
迷子になった子供のような気持ちのまま、孤独になった影が伸びていくのをぼんやりと眺めていた。
影が完全に夜に溶けた頃、よりによって初めての親子らしい感情がこれか、とおかしくなって思わず笑ってしまう。
人形が笑うなんて、可笑しな話だ。
- 名前
- ブラッド(自称)
- 好き
- 紅茶・美しい物の収集
- 嫌い
- 不明
- 年齢
- 不明
- 身長
- 175㎝

