閉じられた世界

生まれた時から生き方は決められていた。暗い世界の、真っ赤な生き方。
言われるがままに教えられる、ヒトの命を奪う技術。
頭領と呼んでいるこの人は自分の親というものなのだろう、という疑問すら口には出せなかった。
何もかもが足りないまま暗殺者として生きることだけを叩き込まれた彼女がある日命じられたのは鬼退治。
そこで出会った鬼の少女に一目惚れした時、ミサキは初めて自分の生を得たように感じた。
この感情の名前を、彼女は知らない。

鬼退治

鬼の少女に恋をした暗殺者はそのまま殺せない彼女の元へ何度も通うことになる。
通うたびに、最初は行き届いていた部屋の掃除がされなくなっていることを知る。食事もあまりとっていないのだろう。それに何よりきっとこの鬼は最近眠れていない。
任務の期限はもう残り少ない。
自分が彼女を殺せないなら新たに人を送り込むだけ。
そして自分は始末されるだけ。
重い足取りで慣れた隠し通路を通ると鬼の少女ーー梅はとても嬉しそうに駆け寄ってきた。
ミサキが来てくれるのを楽しみにしていたの。
そう言って笑う彼女は今日は傷だらけで、大体を察してしまった。
自分に逃げ場はない。彼女にも逃げ場はない。 それでも。
諦めたくないのだ。せめて、彼女をここではないどこかへ連れ出そう。
その先が最悪、死の世界でも。どうせどこに行っても地獄なら、共に。
差し伸べた手を梅が迷いなく取ってくれる。それは確かに幸せそのものだった。

鬼ごっこの終わり

目が覚めると知らない島の知らない布団に寝かされていた。
片足が失われたことに驚きはなかった。自分が眠っている間に梅が怪しい黒龍に懐いていたことの方が驚いたし許せなかった。
怖いしいいヒトではないけど優しいよ、と梅は擁護の言葉を述べたが全く庇えていない。
結局自分は何かに捕まってしまうさだめなのか、とミサキは己の不運を呪った。

龍と兎の共通点

たつみと名乗る黒龍の男に今日は字を習った、今日は護身術を習った、作ってもらったお菓子を食べていたら食べ物の味が戻った、と梅からの報告を聞くたびにミサキは自身のふがいなさに沈んだ。
しかし彼女の幸せに己のプライドは不要。その気持ちを飲み込みつつお見舞いの花冠をくれた梅の頭を撫でた。

「あいつなりにお前を元気づけたいのだろう、早く一人前になって安心させたいようだ」
今日は龍が自分のもとへやってくる何度目かの夜。見舞いとも監視とも暇つぶしとも取れるたつみの来訪にも最近は慣れ、相談をする程度には関係性を築いていた。
「そうかもしれねえけど……オレはもっと頼られたいよ、アンタには感謝してるけど」
「怪我が完治したらお前も学べばいい、教えられることはたくさんある。……おれからすれば、お前の方が羨ましい」
「え?」
最強で、何でも出来ますを体現しているような男が、自分を羨ましがる?
「おれも、そうしてしまいたかったよ。ここではないどこかへ、己の役割など捨てて逃げ出してしまえたらどんなによかっただろう。でもおれの手は、取ってもらえなかった」
だれが、なんて言わないが言わなくてもわかる、わかってしまう。
それは一番愛おしいヒトの話をする時の表情だ。
ああ、彼は今どんな気持ちでこの地に留まっているのだろう!
この時ミサキはたつみにひどく同情した。
手を取ってもらえなかった結果彼がその愛おしいヒトに何をしたのかを知り、同情したことを後悔したのはまた別の話。

名前
美咲(みさき)
年齢
見た目17ぐらい
性別
女性
一人称
私(わたし)
身長
155㎝
好きなもの
可愛いもの・服・写真

「私のお気に入り、邪魔されない場所」

卯の役。

十二支衣装係。元気で明るくちょっぴりいたずら好きな少女…の姿をしたお姉さん。
元暗殺者で荒んだ生活を送っていたが梅に一目惚れ、過去を清算し彼女と共に十二支入りを果たす。
元々の口調と一人称は、ある時期を境に梅のものと入れ替わった。
 今は失った少女時代を満喫中。左足は義足。