人形
マグヌスは空架図書館に住む自動人形である。
人形という器に人間の魂を入れた存在であるため感情は存在しており、その容れ物もメンテナンスの場面に遭遇しなければ普通の人間に見えるほど精巧な造りだ。
館長の役目こそハルナに譲ったものの、今も物語を紡ぐ仕事は続けている。文字通り不眠不休の彼無しでこの図書館は回らない。
黒の浸蝕
招かれざる者たちは今日もやってくる。
形も大きさも定まらない真っ黒なインク溜まりのようなそれはおそらく「物語の作者の未練」だろうとマグヌスは推測している。答えはない。
彼らは基本分かる言葉を喋らないし、ごく稀にいる意思の疎通がはかれる招かれざる者も向こうでの記憶は持たない。
招かれざる者は自身を狙って襲い来る。慣れた手順でそれを対専用武器で貫いたとき、いつもは聞こえない声が確かに聞こえた。
「私の物語を返して」
――返す?
(君が物語を捨てた。君が物語を忘れた。俺がその物語を大事に終わりまで導いたんだ)
「君にはもう、返せない」
それに返そうと思っても手遅れだ。
彼らはどれが自分の愛した物語かも忘れ、ここにある文字を無差別に喰らい散らかす化け物と成り果ててしまったのだから。
真っ黒なインクの血の海の中、マグヌスは考える。
いつのまに自分はこのような欲を持ってしまったのだろうと。
自分が一から作った物語でもないというのに。
心
マグヌス自身も元はとある物語の出身で、神のような視点からあらゆることを勝手に決められることを嫌っていた。
だがそれも時が経てば慣れてしまう。そうやって最適化していかなければ心は壊れてしまうから。
今回の物語は破綻も少なく、結末もタイトルにふさわしい内容となった。
その出来に満足した。満足してしまった。
その満足の為に一体どれくらいの登場人物が犠牲になったのだろう、と自身に問うも昔はあった大きな感情が湧いてこない。
心はもうとっくに麻痺していた。
「人形がこんなことを思うなんて、おかしな話だけれど」
春に願いを
幸せな世界にしたかったんだ。
箱庭から帰って来た黒猫はそう言った。
彼の紡いだ物語は確かにすべてが幸せとは言い難い。そもそも彼自身も箱庭で愛する人や片割れを喪っている。
傷つけ傷つきながらそれでも紡がれる物語。彼は泣いていた。
人形の自分は流せなかった涙。
今の自分にはもう無い、物語に寄り添う心。
リコリス
マグヌスが人間だったころの名前。
基本的におしゃべりが好きな彼だが、この時代のことはあまり話そうとしない。
ただ今と違って、物静かで一人が好きだったらしい。それだけは教えてくれた。
写真
彼の部屋を訪れた時は基本的に伏せられている写真立て。
特別隠しているわけではないので言えば見せてくれる。
彼が図書館に来る前に愛したただ一人の人。
料理
人間の頃は食に興味がなかったらしいが、今は料理を趣味にしている。
測定機能がデフォルトでついている体故に、材料の切り方と調味料配合の完璧さが機械のそれ。
勿論飲食は不可能だがハルナたちが食べているのを見るのは好きなようで、食事の際は基本的に同席するようにしている。
- 名前
- マグヌス
- 主な出現場所
- 執務室・談話室・ミニシアター
- 身長・年齢
- 175㎝/121kg/見た目18歳
- 一人称
- 俺
ようこそ、空架図書館へ。
自動人形の青年。空架図書館前館長。
ハルナの親代わりのような存在。役をハルナに譲ったが図書館の仕事は今でもしている。
派遣部確認印のアルファベットは【M】。
